4話
  第4話 つぐみのお出かけ


  その後,2匹は,まあ,うまく共存はしていましたが,仲がいいかと言われると,いいとまでは言え
 ない,でも悪いというほど険悪でもない...という感じの日常でした.

  つぐみは風と遊びたくて,ちょこちょこ寄って行くのですが,風は,「やあねえ,うっとうしい」という
 顔をして遊んでくれません.それをつぐみも全く気にせず,「あっそう」という感じで一人で遊びます.
 そのひょうひょうとしたマイペースぶりが,また,かわいかったですね.

  さて,つぐみがうちへ来て5ヶ月くらいたった頃でしょうか,所用があって,お里のブリーダーさんが
 つぐみを連れて出かけました.一泊のお泊まりです.きっと,風は一人でのびのびできて喜ぶだろうと
 思ったのですが,つぐみが出かけてしまうと,何と,家中,探して歩くのです.つぐみのいそうな場所を
 一通り探しても見つからないので,困惑したような表情でわたしを見上げて鳴きます.これには驚き
 ましたが,まあ一晩明ければ落ち着くだろうと思って寝ました.ところが,朝起きても,まだ不安げに
 つぐみを探しているのです.

  これは日頃の行動からは,とても想像がつきませんでした.そんなに大切なら普段からもっと親切に
 してあげなさいよね,と言いたくなりましたが,まあ,こういう例は人間にもなくはない.自分は気をつけ
 よう,などと思いました.

  で,夜,つぐみが帰宅すると,知らない臭いをつけてきたのでしょう,臭いを嗅いでは,シャーシャー
 怒る,怒る.まったく,さっきまでの不安な表情は,何だったんでしょう.

  ちなみに,ブリーダーさんにお聞きしたところでは,つぐみはお出かけが楽しくて,ハイテンションで
 ずっとはしゃいでいたとのこと.風の気持ちは,やっぱり,伝わっていないようでした.


第6話 つぐみの出産 そして3匹に

 3 匹になってから,大人と子供では食べ物が違うので,風とつぐみはキッチンのカウンターの上で,海は
キッチンの床でごはんを食べていましたが,ある頃からカウンターの上に 2 匹のごはんを並べても風が
食べなくなりました.別の場所から見ているので,そちらへごはんを持って行くと食べます.あるとき急いで
いたので 2 匹分のごはんをカウンターに並べたままにしておいたら,つぐみが食べ終わってカウンターを
下りると風が来て食べ始めました.あれっ?つぐみが食べ終わるのを待っていたの?

 リビングには天上まで届くネコのアスレチック・タワーがありますが,つぐみがうちに来た頃の棲み分けの
なごりで,タワーの最上段はもっぱらつぐみの昼寝場所になっていました.でも風が寝ているのを見かける
こともあり,まあ共有の昼寝場所だったようです.ところが,風がカウンターでごはんを食べなくなった頃から,
風がタワーの最上段に乗ると,つぐみが飛んできて風をどかしてしまうようになったのです.

 あれ〜?いつの間にか,わが家のボスはつぐみになっていたのでしょうか?

 風も先住ネコのプライドがあるようで,つぐみが圧倒しているという感じではありません.カウンターに
並んでごはんを食べていることもあるし,つぐみも以前同様風に気を使っているようにも見えます.
神経質な風よりつぐみの方が行動が大胆に見えるので,勢力逆転にみえただけなのでしょうか?
のんきものでヤキモチとも無縁なつぐみが,ボスの座をねらうとも,どうも思えませんし・・・.

 女同士なので,どちらがボスと言うよりは,成熟して対等になったということなのでしょうか?
対等な関係なら,「ここだけは譲れない」 ところもあるのかもしれませんね.

 何であれ,相変わらず何があっても風はつぐみには怒らないし,つぐみがくっついて来てもいやがらない.
それは,つぐみを迎えた年の冬から変わりません.そんな様子を見るたびに,あの年,風が突然吐いた
グレーの毛玉を思い出し,何であれ,これからどうなるのであれ,ひとりぼっちだった風につぐみを
いただいてきて本当によかったなと思うこの頃なのでした.
                                                             
  風は子ネコのときから恐がりでした.来客時には,狭いわが家の中で不思議なくらい見事に姿を
 隠して出てきません.留守中,宅配便の人が不在連絡表をポストではなくドアの隙間に突っ込んで
 いったりすると,ドアをカタカタされたのが怖かったのでしょう.あらぬところにおしっこがしてあったり
 しました.

  ところが,つぐみが来て変身.人が来たら,まず,自分で確認に出てくる.新しいものが部屋に持ち
 込まれたら,まず,自分が乗ってみる.お客さんには,まず,自分のことをアピールしに来る.
 つぐみを背中でかばうようにして,「わたしがボスです」と言わんばかりです.今や,初対面の人にも
 すりすりです.つぐみは,そんな風の後ろから,様子をうかがっています.

  やっぱり,一人きりでいることがなくなったのが,風には心強かったのでしょう.それに,また,
 つぐみが,風に逆らわず,うまくやっているのです.冬が来る頃には,風は,つぐみが何をしても
 怒らなくなりました.風が遊んでいたおもちゃを,つぐみが取っても怒らない.たま〜に,風が食べて
 いるお皿に,わきから顔を突っ込んでも怒らない.「しょうがないわねえ,子供は」 という感じです.

  ・・・まさか,将来,つぐみが対等な立場になるなんて,想像もしていなかったでしょうね.

 1 歳のお誕生日を過ぎて一週間ほどした頃,つぐみに初めての発情が来ました.お里に数日の
ハネムーンに行き,月満ちて 3 匹の子ネコの母になりました.お気楽が売りのつぐみらしく,人が来ようが
風が見ていようが,ど〜んと手足を広げて授乳するし,風が子ネコに「シャーッ」と言っても気にもしない.
子ネコは 1 匹 (海) だけうちに残しましたが,お気楽な母と母の血をひくマイペース息子では,親子のペアで
勢力増大といった傾向はまったく見られず,単純に子ネコが 1 匹増えたという感じの生活でした.つぐみは,
ごくたまに海を舐めたりしていましたが,しいて親子らしい様子といえばそんな程度のものでしたね.

 さて,それなりに 3 匹の生活が落ち着いてきた秋,育児やつれでほっそりしていたつぐみがだんだん
ふっくらまあるくなってきました.長さ (身長と言うのでしょうか?) も長くなり,顔もまあるく,体もぽてっとした
感じになり,いかにもシャルトリューらしい大人の女の姿です.2 歳のお誕生日を過ぎた頃には,風とどちらが
先住ネコだかわからないような落ち着いた雰囲気になりました.


  第5話 風の変身

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 第7話 わが家のボスは? (ひとまず最終回)

風がいたところへつぐみが来て,
お尻をくっつけて寝てしまいました.
後から来た海は風に
「あなたはくっつかないでちょうだい」
とひと睨みされて,離れた場所で
お昼寝です.
(海には突然襲いかかられることが
あるので・・・)